LIVE COMPLETE '95~'96

長渕剛 LIVE COMPLETE '95~'96歌詞
1.気張いやんせ

作詞:長渕剛
作曲:長渕剛

どげんしてん やらんと いかん事がよ
俺にも お前にもひとつくらいある
やっせんぼ やっどんからん よかぶいごろの
あげんな 汚っさね 真似やできん

※前つんのめりで 生きて 行こや
誰が悪いち 言うもんか
気張れ 気張れ 気張いやんせ
一度どまけ死ん限い 気張いやんせ※

泣こごんなった時や 俺家 来んか!
馬鹿された時や お前も向こて行こや
俺たちゃ どげんしてん 汚れ者
じゃっけど 譲れんもんも あろ

(※くり返し)

生好かん 奴なら 打ったくればよか
負けたら 頭を 下ぐればよか
寂しなったら 唄いやんせ
俺にも お前にも 理由が あろ

(※くり返し)

気張れ 気張れ 気張いやんせ
一度どまけ死ん限い 気張いやんせ

気張れ 気張れ 気張いやんせ
一度どまけ死ん限い 気張いやんせ

気張れ 気張れ 気張いやんせ
一度どまけ死ん限い 気張いやんせ


2.HOLD YOUR LAST CHANCE

作詞:長渕剛
作曲:長渕剛

傷つき 打ちのめされても
はいあがる力が欲しい
人は皆弱虫を 背負って生きている

にがい涙を かじっても
ほほえむ優しさが欲しい
君が愛にしがみつくより
先ずは 君が強くなれ

Hold Your Last Chance
小手先ではがれ落ちる美しさより
Hold Your Last Chance
ひとつぶの汗の方がいい
二度と走れぬ 坂道を上ったら
Hold Your Last Chance

誰かが人生でつまづいたら
さしのべる思いやりが欲しい
人は皆淋しさを 背負って生きている

頬を突き刺す怖さがあっても
立ち向かう勇気が欲しい
曲がりくねった迷路で
真実の自分を探すんだ

Hold Your Last Chance
テーブルに飾られたバラより
Hold Your Last Chance
野に咲くれんげ草の方がいい
二度と走れぬ坂道を上ったら
Hold Your Last Chance
Hold Your Last Chance


3.人間

作詞:長渕剛
作曲:長渕剛

そうだ 俺たちは人間だもの
二人のからだには 血が流れているから

息が詰まるほど 悲しかったから
あなたにしてやれる ことといったら

あなたと空を見て あなたと泣いて
あなたのその手を 握りしめることくらい

あなたのこの手が 温かいのは
あなたのからだに 血が流れているから

そうだ 俺たちは人間だもの
二人のからだには 血が流れているから

人を愛するたび 切なくなるけれど
やっぱり独りでは 生きてゆけません

苦しみの数だけ 涙を流したら
やさしきあなたを 迎えにゆくから

美しい心と やさしい命が好き
いつでも いつまでも
そんなあなたのそばがいい

そうだ 俺たちは人間だもの
二人のからだには 血が流れているから
そうだ 俺たちは人間だもの
二人のからだには 血が流れているから
そうだ 俺たちは人間だもの
二人のからだには 血が流れているから


4.STAY DREAM

作詞:長渕剛
作曲:長渕剛

死んじまいたいほどの苦しみ悲しみ
そんなものの ひとつやふたつ
誰もがここあそこに しょい込んでるもの
腰をおろし ふさぎ込んでも 答えはNothing!

ぶっ飛ばしたいほどの 怒りや悔しさ
そんなものの ひとつやふたつ
殴られた痛みは TRYへのワンステップ
尽きせぬ自由は がんじがらめの不自由さの中にある

くよくよするなよ あきらめないで Just Like a Boy
その痩せこけた 頬のままで
果てしない迷路の中を
人はみんな手探りしてでも
Stay Stay Dream
そう Stay Stay Dream
Stay Stay Dream

ひねくれかけた瞳の ずっとずっと奥に
もがいてる もうひとりの俺がいる
一番怖いものは 勇気だと知った時
自分の弱さに 想わず鼻をつまんだ

もうこれ以上 先へは進めない
たとえば 挫折が目の前に立ちはだかる
そんな夜は 心で命の音を聞け
たかが こんな自分は!と 一度だけからかってみなよ

くよくよするなよ あきらめないで Just Like a Boy
その痩せこけた 頬のままで
果てしない迷路の中を
人はみんな手探りしてでも
Stay Stay Dream
そう Stay Stay Dream
Stay Stay Dream…

Stay Dream…


5.LICENSE

作詞:長渕剛
作曲:長渕剛

幼い頃俺は いつも海が好きだった
バラック小屋に4人暮らしで とても幸せだった
むき出しのプロパンガス コールタールの壁
壊れかけた雨戸 夕暮れの背中
あの路地口でいつもおふくろは泣いてた

週末になると 親父はいつも 俺をバイクに乗せた
人気のない海岸線に 親父は腰をおろした
黙ったままタバコをふかし ずっと遠くを見てた
生真面目だけの自分の人生に憤りを感じてた

遮断機が降り 錆た線路を蒸気機関車が走る
踏み切りを渡ると 河川が流れ
繊維工場の煙 回送列車が操車場へ入る その前に
駆け足で早く 駆け足で早く 家へ帰った

買い物篭を下げたおふくろが 俺の手を引いてゆく
昨日の涙の理由も言わず 優しく唄っていた
河川づたいに 大きな影と小さな影が揺れる
子供達の為だけに ただ優しく唄ってた

親元を離れ 戸惑いながら月日は流れていった
薄汚れた都会のベランダから 見えない海を眺めた
俺は初めて 親父やおふくろをたまらなく愛した
取ったばかりのカーライセンス
明日 羽田に迎えに行く


6.激愛

作詞:TSUYOSHI NAGABUCHI
作曲:TSUYOSHI NAGABUCHI

舌を噛み切った からみ合う口唇の中
二人はよじれ合い 激しく揺れていた
震える 流れる 青白い肌
ひきよせても ひきよせても 届かない
溶けてゆく無数の汗 心と躰を流れてゆけ

愛は潜水艇のように 苦しみをもぐり
激烈な痛みが こめかみを突きぬけた
時は過ぎ 夜を越え凍りつく
愛の海 深く深く 沈みゆく
堕ちてゆく憎しみに 息が絶えるまで俺を抱け

俺たちは互いに 愛を戦った
焼け焦げた魂は 灰色に立ち昇り
とぼとぼ とぼとぼ 死んでゆく
こわれた破片は 風に舞う
ひき潮のうねりの中 ふたつの手首よ赤く染まれ

かすかに触れ合う力果てた指先
導かれるように 静かに瞳を閉じた
ゆるやかな呼吸は 首すじをすべり
衰弱の闇へと 色あせてゆく
果てしない体気の中 くち果てるまで重なってゆけ


7.交差点

作詞:長渕剛
作曲:長渕剛

君の胸の痛みが
僕にわかるといいね
無理に笑顔で別れた
涙色の悲しい交差点

暮れてく街並の中
かけてく うしろ姿を
ひきとめられもしないで
しあわせが またひとつ消えた

もう少し この僕に
大きな心があれば ただそれでいいんだ

行かないで 僕のそばから
泣かないで もう離しはしないから

輝いてるね 昔が
きっとそれは本当だね
優しくしてあげたくて
優しくしてあげられなくて

わかり合えない はがゆさを
感じ始めた 僕らが
愛の道しるべ探し
たどりついた悲しい交差点

信号が変わったら
やっぱり人ごみの中へ消えて行くんだね

行かないで 僕のそばから
泣かないで もう離しはしないから

行かないで 僕のそばから
泣かないで もう離しはしないから

もう 離しはしないから


8.ひざまくら

作詞:長渕剛
作曲:長渕剛

お前のひざまくらが とっても
俺らにゃ 心地よいから
しばらく このままでいておくれ
やさしさに うもれてみたいんだ

「子供みたいだね」お前が言う
「いいじゃないか」と照れ笑い
スカートの裾を 指でたどると
「ダメよ」とお前 照れ笑い

※今夜ねむるよ 俺らこのままで
今夜ねむるよ 俺らこのままで
おちつける場所は お前のひざまくら
ひざまくら um…※

やわらかい お前の小っちゃな手
それも俺らだけのものだよ
お前の香りは 大きなささえだ
しあわせ者だよ 俺ら

不思議な奴だなお前って
毎日が苦しいはずなのに
愚痴ひとつ言わずに 笑える女だ
俺らをいやす ひざまくら

(※くり返し)


9.東京青春朝焼物語

作詞:長渕剛
作曲:長渕剛

両足が鉄の棒のように 痛かった
お前と二人で不動産屋を廻った
はり紙を 何度も何度も なぞりながら
井の頭線で五つめの駅で降りた
愛想の悪い酒屋で 俺は缶ビールを買った
植木鉢の下に 鍵を置く事に決めた
荷ほどきできない ダンボール箱を背中にして
俺たちは えびのように丸くなった

今日から俺 東京の人になる
のこのこと 来ちまったけど
今日からお前 東京の人になる
せっせせっせと 東京の人になる

二人でおんぼろの自転車にのり
野良猫の“チロ”を お前は拾ってきた
不釣合いな花柄のカーテンには困ったけど
南向きの窓が たまらなくよかった
豆腐屋のばあさんは ゴムのエプロンに長靴で
いつも そこら中に 水をまいていた
「ごめんよ」が
このばあさんの いつもの挨拶で
そこを通るたびに 笑ってた

今日から俺 東京の人になる
のこのこと 来ちまったけど
今日からお前 東京の人になる
せっせせっせと 東京の人になる

カンカンと遠くで 踏切が鳴いてた
夕暮れ時の雨は 嫌だった
つっかけを履いたまんま 女ものの傘をさし
角のバイク屋へ空気入れを借りに行く
鉄柵の向うからは 空が見えなかったけど
暮らすのに何の理屈も いらなかった
ただ初めて お前の台所に立った背中を
抱きしめたのは ささやかな俺の覚悟だった

今日から俺 東京の人になる
のこのこと 来ちまったけど
今日からお前 東京の人になる
せっせせっせと 東京の人になる
今日から俺 東京の人になる
のこのこと 来ちまったけど
今日からお前 東京の人になる
せっせせっせと 東京の人になる


10.友よ

作詞:長渕剛
作曲:長渕剛

もしも貴方にしてあげられることといったら
いっしょに泣いてあげることくらい
そして両手を合わせて祈ることくらい
だけど決して私を優しい男だと
どうか思わないで欲しいんだ何故ならば
人知れず俺だってこっそり泣くのだから

友よ その昔 俺たちは汗をかいた
友よ その昔 俺たちは西陽を追いかけた
友よ その昔 俺たちは土の匂いをしてた
友よ その昔 俺たちは守るために走ってた

もしも貴方にいっしょに泣く人間がいなければ
涙が枯れるまで貴方が泣けばいい
そして俺たちの昔を思い出して欲しい
だけど決して 決してあきらめないでくれ
どうかもう一度広い校庭の向こうの手の届かなかった
頭の上 赤錆びた鉄棒にぶら下がろうよ

友よ 君たちは今 汗をかかなくなったね
友よ 君たちは今 西陽に背を向けてるよね
友よ 君たちは今 土の匂いに鼻をつまんでる
友よ 俺は今でも 守るために走っていたいのだ

友よ その昔 俺たちは汗をかいた
友よ その昔 俺たちは西陽を追いかけた
友よ その昔 俺たちは土の匂いをしてた
友よ その昔 俺たちは守るために走ってた
友よ 君たちは今 汗をかかなくなったね
友よ 君たちは今 西陽に背を向けてるよね
友よ 君たちは今 土の匂いに鼻をつまんでる
友よ 俺は今でも 守るために走っていたいのだ
友よ 君たちは今 汗をかかなくなったね
友よ 君たちは今 西陽に背を向けてるよね
友よ 君たちは今 土の匂いに鼻をつまんでる
友よ 俺は今でも 守るために走っていたいのだ


11.耳かきの唄

作詞:長渕剛
作曲:長渕剛

徹底的に人間(ひと)にハメられた
昨日しこたま便所で吐いた
吐いても吐いても吐き足りず
ついに便器にへたりしゃがみこむ

突っ伏した俺の背中をさすりながら
舌を出してるお前が辛くて
あきれるほど腹ン中から涙が出たけど
ただ白い便器とお前のコロンが臭かったからだ

どうせ一回きりの人生なら
潔くかっさらわれてみるのもいいさ
馬鹿だと世間にののしられても
情けないほど女々しく泣くよりよっぽどましだ

※信頼という言葉たちが浮き足立って逃げて行く
正直という言葉たちが茶色いバッグをぶら下げて逃げて行く
誠実という言葉たちがこの国では利用にすげ替わる
友情という言葉たちがこの国では裏切りに変わる※

俺は今、渋谷駅前の信号機を待ち
ふとJeepの窓の外を見た
行き交う人々の頭の上で
俺の「過去(むかし)」と「現在(いま)」の顔がポスターになってた

けなげな不良学生たちがそれを指さし
「いつかの少年」をじっと見つめてた
初めてこの街をまともに歩いた
十七年前の俺に帰ろう

東京に出て来てから今までの俺の青春は
根こそぎ銭に換えられちまったけど
裏切り者の大泥棒たちも
あの頃は確かにマジだった

どうせ一生、男を張るなら変わらぬ大馬鹿者をつらぬこう
一生、男を張るなら被害者面して逃げるのはよそう
どうせ一生、男を張るならヤクザと呼ばれて上等だ
一生、男を張るなら銭のカラクリなどくそっくらえ

常識も非常識もないこの国では
差別とやっかみに全てをすり替える
同じ島国で生まれ育ったのに
貧しき心で弱き者をあざ笑う

変わってゆく者が利口なのか?
変わらぬ俺がマヌケなのか?
出口のない答を探し悩むより
俺に惚れてくれる奴を当たり前に愛そう

人間の“生き死に”さえも銭に換えるこの国だから
ありったけの命をたたいて今、叫ぶのだ
「すみません!毛玉のついた安い耳かきを突っ込んで
人間の声を聴こえるようにしてくれ!」

どうせ一生、男を張るなら変わらぬ大馬鹿者をつらぬこう
一生、男を張るなら被害者面して逃げるのはよそう
どうせ一生、男を張るならヤクザと呼ばれて上等だ
一生、男を張るなら銭のカラクリなどまっぴらだ

(※くり返し)


12.三羽ガラス

作詞:長渕剛
作曲:長渕剛

俺だけが黄昏る夕暮れからかっぱらった
金色の小石を三羽ガラスがくすねる
苛立ちを酒に溺らせて
絆ちぎりにゃむごたらしく筋の通らぬ裏切り

はめた憎しみドブへ流し受けた恩は食い散らかし
ごぜん様気取って「今日の仕事は辛かった」と
愚劣なカラス弱いフリ
我が身よろしくねんころりゲスな女に雨やどり

ケジメを取れよ 茶・茶
オモチャの茶・茶・茶
さげすみ、おとしめ、たらしこみ
頭かくして尻かくさず
三羽ガラスの逃げっぷり

カーカーカーカー 今鳴いたカラスがもう笑う

純情可憐な花一輪 栄養不良のくちばしで
容赦なくむしり取るから太い首でも回らねえ
泥棒ごっこはお手のもの
つるんだ企み闇に消し純情気取りのたぶらか師

放っぽり出された赤子みたいにあの時ゃ俺に泣き叫び
ワキの下 足の裏 俺の股の臭いかぐ
すっぽり嘘をくわえこみ
媚を売り売り寄っかかる首をはねたら逆恨み

※ケジメを取れよ 茶・茶
オモチャの茶・茶・茶
手のひら返しに二枚舌
見掛け倒しに口車
三羽ガラスは飛んで行く※

(※くり返し)

カーカーカーカー 今鳴いたカラスがもう笑う


13.しゃぼん玉

作詞:長渕剛
作曲:長渕剛

ひりひりと傷口にしみて 眠れなかったよ
泣きっ面にしょんべん ひっかけられた夜
薄情な男だと 夜を 一枚ひんめくりゃ
ぐずぐずしてちゃいけねえと 照れずに 思えた
つまらぬこだわりは 身を縮めるだけだった
ほんの一瞬でも お前を愛せてよかった
枯れ果ててしまっても 温もりだけは残ったよ
妙に悲しくて いさぎよくて
本当に気持ちよかったよ

淋々と泣きながら はじけてとんだけど
もっと俺は俺で ありますように
いったい俺たちはノッペリとした 都会の空に
いくつのしゃぼん玉を 打ち上げるのだろう?

きしりきしりと横っ腹が 痛かった
馬鹿っ面ぶら下げて上等だと ひらきなおった
人生が少しだけ うるさくなってきたけど
逃げ場所のない覚悟が 夢に変わった
帰りたいけど帰れない もどりたいけどもどれない
そう考えたら俺も 涙が出てきたよ
くじけないで なげかないで うらまないで とばそうよ
あの時笑って作った しゃぼん玉のように

淋々と泣きながら はじけてとんだけど
もっと俺は俺で ありますように
いったい俺たちはノッペリとした 都会の空に
いくつのしゃぼん玉を 打ち上げるのだろう?

淋々と泣きながら はじけてとんだけど
もっと君は君で ありますように
いったい俺たちはノッペリとした 都会の空に
いくつのしゃぼん玉を 打ち上げるのだろう?


14.泣くな、泣くな、そんな事で

作詞:TSUYOSHI NAGABUCHI
作曲:TSUYOSHI NAGABUCHI

うらやむほどの男に「俺」なりたくて
みっともねえ真似をずいぶんしてきた
だけど良いも悪いも全部自分だから
せめて人の心を決して裏切らぬようにと

筋の通らぬせち辛いこの世の中で
あいつとうまくやっていきたいだけだった
信じる心はバナナのたたき売りみたいに
しおれた花に足をふんづけやがる

※泣くな 泣くな たかだかそんな事で
泣くな 泣くな たかだかそんな事で
叩かれ だまされ おまけに追いつめられ
生きる事が嫌になる時くらい 俺にもある※

だらしのねえ ひ弱な俺の胸を突き刺せば
力のなさと言いわけが 背中でせせら笑う
わかっちゃいるけど やめられねえ事もあった
だけど生爪(なまづめ)はぎ取るほどの痛みでもねえ

わかってたまるか 大粒の涙をちぎり捨て
眠れぬ夜に ただひとり酒をかじる
かみしめる口唇から なおさら血がにじむ
だけど容赦なく明日は俺の頭上にやってくる

(※くり返し×2)


15.月が吠える

作詞:長渕剛
作曲:長渕剛

月が垂直に立ち上がってる
閉ざされた鉄格子の小窓の向こう
低い屋根瓦から物悲しく
上弦の月が吠えている

一日四十本のタバコの煙で
砕けきしむ私の肋骨が折れるほど
薄い胸板を思いきりふくらまし
冷酷な世間の風を吐き捨てた

おうおうと私が泣くから
おうおうと月が吠える

叱る母もなく怒鳴る父もなく
帰る家も壊れ沈む時
最後に残るものは悲鳴じゃない
弱き者たちへの瞳(まなざし)が在る

さぞかし辛かったあの人間(ひと)たちと
おちょこ一杯分もの塩っ辛い涙を
私の命と貴方の命で酌み交わせば
五臓六腑に優しさがしみる

おうおうと私が泣くから
おうおうと月が吠える

どうか愛しき人間(ひと)よ、ご無事でいて下さい
どうか恨まず憎まず悪びれず
雲行きを明日に賭けて私は行きます
弱き者たちへの瞳(まなざし)在る場所へ

おうおうと私が泣くから
おうおうと月が吠える


16.一匹の侍

作詞:長渕剛
作曲:長渕剛

傲慢無礼さになす術もなく
大切な男が目の前で死んだとき
俺たちはただ黙って指をくわえるだけなのか!
己、一匹の侍

売られたケンカならば潔く買っちまえ
天空へ突き抜ける鉄拳をねじり込め
修羅場の向こうの葬式が終わったら、今こそ
己、一匹の侍

すみません、灯を貸して下さいよ
命の滴の流れゆく道を照らすから
どうせ貴様も軟弱なアバラ骨に手を当てりゃ
己、一匹の侍
裏切りばかりのこの世で表をガッチリ歩くためによく聞け!
己、一匹の侍

イカサマだらけのこの街をぶった切れ!
朝となく昼となく夜となく
骨身を削って汗水垂らせ、まだまだ
己、一匹の侍

腹ン中かっさばき背骨をつくれ
被害者面して芝居上手な貴様
今夜限り縁をたたっ切れ、されど
己、一匹の侍

すみません、灯を貸して下さいよ
命の滴の流れゆく道を照らすから
どうせ貴様も軟弱なアバラ骨に手を当てりゃ
己、一匹の侍
裏切りばかりのこの世で表をガッチリ歩くためによく聞け!
己、一匹の侍
己、一匹の侍


17.己

作詞:長渕剛
作曲:長渕剛

許せることと許せないことがある
そして許しちゃいけないことがある
譲れることと譲れないことがある
そして譲っちゃいけないことがある

それは自分自身です
それはまぎれもなくこの「俺」です
本性はいつの世でも瞳(め)に見えないものだ
一番大切なものは私の揺るぎない心です

だからかたがつくまで黙り通してみましょう
俺は生まれて初めて本気で怒ってるのだから

我慢するものと我慢できないものがある
そして我慢しちゃいけないものがある
笑えるものと笑えないものがある
そして笑っちゃいけないものがある

それは自分自身です
それはまぎれもなくこの「俺」です
本性はいつの世でも瞳に見えないものだ
一番大切なものは貴方の優しき心です

だからかたがつくまで口を慎みましょう
俺は生まれて初めて本気で怒ってるのだから


18.家族

作詞:長渕剛・高山文彦
作曲:長渕剛

ギラギラと焼けつくコールタールの屋根に
むせかえる灼熱のあの夏の放課後
俺たちはたくさんの自分を閉じ込めて
しゃぼん玉を青い空へ飛ばしたよね

七色に輝く俺たちの未来は
「信じる」とか「信じない」からかけ離れてた
何の疑いもなく陽炎といっしょに
天空へ確かにはじけず昇ったよね

あれは遠い、そう夏の日の午後
広い校庭に水をまいた
決まって夕立のあと俺たちは
裸足のまんまで西陽を追いかけた

悲しかったけど…
泣きたかったけど…
「家族」という船に乗り
「孤独」という海に出た
「家族」という船が行き過ぎ、
今「孤独」という魚になった

そばがらの枕と重たく湿ったふとん
吊した蚊帳をめくると苦しい夢をみた
天井には姉ちゃんのすすり泣きが響き
俺はじっと明日を垂直に考えてた

終業式の木造の校舎まで
明日はバスに揺られる最後の日だ!
割れた窓ガラスにセロテープを貼ろう
そして色あせたランドセルを川へ捨てよう

ひざまでザックリつかりハヤを追いかけた
気の遠くなるよな夕暮れまでの瞬間
母親の夕餉の仕度と立ち昇る煙が
たまらなく嫌だったけど 明日が待ちどおしくて

つらかったけど…
悔しかったけど…
「家族」という船に乗り
「孤独」という海に出た
「家族」という船が行き過ぎ、
今「孤独」という魚になった

農夫たちのぶ厚い人間の手のひらに
今日一日分のお椀を返したら
親父もお袋も姉ちゃんも俺も
やがて「ふるさと」という呼び名から離れて行くのだ

「さよなら」を言わなきゃいけない数の方が
出会いの数より多かったよね
親父の胸の草むらであの夏の日
「もう母ちゃんを殴らないで!!」と約束をした

今ごろ貴方の父や母は
どこの空の下で泣いてるの?
貴方の人間は貧しくなんかない
いとおしくなったから生き急ぐのだ

逃げたかったけど…
死にたかったけど…
「家族」という船に乗り
「孤独」という海に出た
「家族」という船が行き過ぎ、
今「孤独」という魚になった

白地に赤い日の丸 その父をたまらなく愛してる
白地に赤い日の丸 その母をたまらなく愛してる
白地に赤い日の丸 その姉をたまらなく 愛してる
白地に赤い日の丸 殺したくなるよな 夕暮れの赤
白地に赤い日の丸 この国をやっぱり 愛しているのだ


19.何故

作詞:長渕剛
作曲:長渕剛

怒りが悲しみに変わる時
人間(ひと)を愛せるのは何故!
老いさらばえた人たちの丸い背中が
弱き者たちの心を打ち震わすのは何故!

貴方のようになりたいと願わず
貴方のようになればいいだけだ

※絶望を力に変える時
明日を待たず明日へ立ち向かわせるのは何故!
孤独を優しさに変える時
絆とは決してちぎれたりしないものだ※

憎しみが憂いに変わる時
自分(わたし)を愛せるのは何故!
夜を疑わず月の満ち欠けに涙すれば
生きる事に凛々しさを感じるのは何故!

無言の子供の瞳から目をそらさず
無言の子供の瞳になればいいだけだ

(※くり返し)


20.身をすててこそ

作詞:長渕剛
作曲:長渕剛

貴方の優しさが身にしみて
言えない事もありました
こんなろくでもないぼんくらでも
貴方のお役にたてるのならば
どうか嘘のひとつやふたつ つかせて下さい
身をすててこそ 明日へ向かえる時がある
身をすててこそ 明日へ向かえる時がある

時には俺だって一人で泣く夜もある
誰かにおもいきりすがりつきたくて
考え込むほどの頭もないし
だまし通せるほど偉くもないから
こんなどしゃぶりの雨の日だからこそ
傘を捨てて濡れた土の上を歩いてみようと決めた

身をすててこそ 俺は明日へ向かうから
身をすててこそ 俺は明日へ向かうから